噂好きのこの男が、先輩とボクの噂を知らないはずがない。
どこまで具体的に真実寄りの噂が立ったのかは知らないけど、明らかに何か知っている笑い方だった。

梶原が今笑ってるのは、ボクじゃなくて電話の向こうの先輩だ(多分!)。
そう自分に言い聞かせて、ようやく戻ってきた電話越しの声に耳を傾ける。


『ご、ごめん。携帯落とした』

「やっぱり」

『あの――、2人だけ? 大丈夫?』

「ぶっ」


再び『大丈夫?』と聞いた先輩に、さすがにこらえきれずに吹き出す。
そんなボクを見た梶原も、腹を抱えるようにして机を叩きながら笑っていた。


「電話、代わりましょうか」

そう言って、響先輩の返事を待たずに携帯を梶原にまわした。