『返事はしないで』という言葉を美紗は使ってみせたけど――そしてもしかしたら、純平も似たようなことを美紗に言ったのかもしれないけど――、


響先輩が使ったのと同じであるはずのその言葉が持つ意味が、同じであるようには、ボクには思えなかった。


先輩とボクの間にはタイムリミットがあり、先輩はその言葉にわずかな希望を託した。

返事を先延ばしにしているけれど、ボクはいずれ答えを出すだろう。
答えは白か黒か。
そのどちらかしかない。


即答しないのが不誠実に感じたこともあったけれど、ついこの間まで知らない人であった先輩とボクには時間が必要だったのだ。

それは、正しい返事をするために必要な時間。