「そもそも私はフラれてもいないし、フッてもいないのに」

口元に手を当てながら、美紗はくすくすと可笑しそうに笑った。


『フラれてもいないし、フッてもいない』
――その言葉を、頭の中で繰り返す。


確かに――、ボクははっきりとお断りしたわけじゃないけど。
だけど……


「なお」

呼びかけに、思考は遮断される。

「返事はしないでね」

「――ッ!」


その、言葉は――、

「どこかで聞いたような言葉ね」

……響先輩の。


隠し切れない痛みを繕った笑えない冗談に紛らせながら、美紗は弱々しい声で嘲った。