美紗は、口を真一文字に結んでキッと純平を見つめた。
それが結構長くて、2人のアイコンタクトにどんな意味があるのかボクには読み取れない。

何かを訴えるような美紗の強い視線に耐えかねたのか、純平は少しだけ目を泳がせ――、それから、大げさに肩を竦め、ふてくされたような顔で顎をしゃくった。


「……は?」

理解の範疇を超えたそのやり取りに、思わず間抜けな声が漏れる。
ボクのその声を聞いて、純平は鼻で笑った。

それが合図だったみたいに、美紗は「だけど」の後を続けた。


「純平がね、来いって言うものだから」

「……ええ?」


……それだけ?

ボクは抵抗に逆らって重い瞼を見開いた。
勿体ぶったさっきのタメは、一体何だったのか。