一瞬ですっかり生徒会長の顔を取り戻した先輩は、すっと立ち上がる。

不安で泣きそうな顔も、真剣な目も、子供みたいに崩れた笑顔も、焦りも傷も全部、その柔らかい仮面の下にしまい込んでしまったみたいだった。


「あの2人にも明日からのことを説明したいから」

と、どうやら美紗たちがいるところでまとめて話すつもりのようで、会長は2人の元に案内するように促した。

ボクが2人の居場所を知っている前提で話しているところを見ると、彼は、普段通りであればボクがこの後美紗や純平と一緒に帰るということも分かっているのかもしれない。


まるで告白などなかったかのような、それは見事な切り替えだった。


――返事は【まだ】しないでってのは、一体どういうことなんだろう。
ボクはこの人の気持ちを知ってしまったのに、ただ、黙って今までどおりにしていればいいんだろうか。