ああ、こんなことが前にもあったな。
周りが見えなくなって、どうやって歩いたかも分からない。
けど、気付いたらボクは、歩き慣れた道を歩いて家に辿り着いていた。


……美紗が、部室棟の裏で純平に泣きついていた時だ。


――そうか……あの時の美紗の涙は、ボクが原因だったか。
美紗が響先輩になんとなく冷たかった理由も、今なら分かる。


別館と本館のつなぎ目の階段を、頼りない足取りのまま身体が勝手に降りはじめる。

こんなんじゃ踏み外して落っこちちゃうんじゃないか。
まあ、それでもいいや。
そうなったら、後のこと、しばらく考えなくて済む。


あの時は、どうやって立ち上がったっけ。
……そうだ、先輩が支えてくれたんだ。

響先輩が。


――どこ、行っちゃったの?