別館の特別教室は今どこも使われていないのか、廊下はしんと静まり返っていた。


教室へ戻ったら、美紗と顔を合わせなければならない。
どんな態度をとれば良いのか、……自分がどうしたいのかも、ボクには分からない。

避け続けることなど出来ないと、分かっていても。


いっそこの辺の空き教室に、放課後まで隠れていようか。
隠れて……誰にも会わずに……時間だけが過ぎたら……

時間は。
過ぎることはあっても、戻ることなど、ないのに。
なかったことになど、なるわけがないのに。


ちゃんと分かっていて、それでもボクの頭は、現実逃避を繰り返した。
ボクも今は、1人になりたい――。


それなのに、目的地を見失った身体は習慣に従い教室を目指していた。