「わりぃ」

右腕で顔を隠したまま、彼は言った。

「1人になりてえ」


ボクは黙って目をつむる。
さっきカーテンを閉める時に見た太陽が、紅い点の残像になって浮かんだ。

まぶたが、熱い。
閉ざした視界の中で、紅い点が、暴れた。


静かに席を立つ。
もう5限も半ばになっていた。
行く場所などどこにもない、それでも。

ボクがここにいることを、彼が、許さないから――。
これ以上彼に、傷ついてほしく、ないから。


机の上の荷物をまとめ、それを手に出口へ向かう。


純平はソファの上で、もう微動だにしない。
ひと言も発しない。
微かな音さえも。