純平はそれ以上具体的な質問を続けなかった。
ボクが答えられないことを、分かっているからだ。

代わりに、違うことを聞いてくる。


「慰めてくれんじゃ、なかったの」

「――ッ!」


……それを。
それを、純平が、望むなら。
ボクに、望むなら……。


美紗の【一番大切な人】が誰だったのか、純平は知ってしまった。
その時が訪れることを彼は震えるほど脅えていたけど、きっとどこかに、もしかしたら自分がという期待もあったはずなのに。

彼の知らない内にその時は訪れてて。
相手は身近すぎて予想すら出来なかっただろう人物で。

純平がもし美紗にフラれたら、ソイツが慰めるって約束だったのに。
――ソイツのせいで純平がフラれるなんて、万に一つの可能性すら考えてなかった。
純平も、ボクも。


「……笑ってやるって、言ったんだよ」


哀しい。
負った傷は、痛みは、こんなにも共鳴しているのに。


「笑えよ」

「――……笑えねえよ」


言葉少なく、ボクたちは互いの傷を抉りあうしかない。