「お前、どーすんの」

長い長い沈黙を破って純平が口を開いた時には、すでに5限目の授業が始まって20分ほどが過ぎていたと思う。
どーすんのって言われても、

「何を」

としか、言えない。


その質問が【美紗と付き合うのか】という意味なら、答えはもちろんNOだ。
だけど純平が短い言葉に込めた意図は、そんな単純なコトじゃない。

これからボクは、彼女に対してどう接していくのか。
嫌いにならないで――そう言いながら、ボクの元から逃げるように消えて行った彼女は?

全て壊すことも覚悟の上でぶつかってきた彼女の気持ちを、聞かなかったことにはできない。
彼女に無理やり引き出された自分自身の感情の処理すら追いついていない。

今までどおりでいられる、わけがない。


「なにを、……か」

はっ、と短く、彼は笑った。

自嘲を込めたようなその笑いに、胸が痛む。