先輩の大きな右手が、ボクの頭にそっと乗せられた。
その瞬間、ふわりと力が抜け、無意識にボクは目を閉じた。


ああ、このまま眠ってしまいたい。
そして起きたら、全部夢だったことになればいい。


羊を5匹まで数えたところで、頭が軽くなる。
先輩が手をどけてしまったことを知って、現実逃避を諦め目を開けた。


先輩はくるりとソファの側へ振り向くと、純平の頬を軽く叩いた。

「大丈夫か」


そう聞かれてから10秒近い沈黙を置いたあとで、純平はゆっくりと上体を起こし、虚ろな目で机の下あたりの何もない空間を見つめたまま、小さく片手を上げた。