別館の廊下の突き当たりに1人残されたボクは、そのままただ突っ立っていた。
音のないその空間に取り残されて、思考を手離した。


正確に言えば、多分音はある。
それが、ボクの耳には届かなかっただけ。


そこは暗闇でもないし、足はしっかり地に着いていた。
だけど――、まるで別次元に浮遊しているような感覚で、右も左も、上も下も覚束なくなったボクは、微動だに出来なかった。


どれくらいそうしていたか分からない。

背後のドアが開いて、後ろから声をかけられたことにもすぐには気付かなかった。


「――お……――なおっ!」