担任の教師は、仕方ないなとため息を吐いた。
生活態度も良好で学年1成績も良かった美紗の正論を、クラス中が支持した。
そしてそれは、学校側にも難なく受理された。

スカートを穿かないことを、ボクは許された。


――そしてボクは、女の子に戻る道を閉ざされた。
卒業式ですら、ジャージでいることを許された。


……逆だ。


ボクは、スカートを穿くことを、誰にも認められなかったんだ。




『なお、やめなさい。傷が残るわよ』


あの頃よく、左手の人差し指の先を、カッターナイフで削った。
流れ落ちる血を拭い絆創膏を貼りながら、『女の子なのに』と彼女は呟いた。

少しの痛みに動じないだけの強さを、ボクに求め続けたのは美紗の方なのに。