一応みんなが食べるの待ってんだけど、と急かしたところで、やっと純平もクッキーに手を伸ばした。


――先走って勘違いして、心の中とは言え『バカ』なんつって、ゴメンね純平。


クッキーを飲み込んだ純平が

「あ、ホントにうめー」

と言って、ヤツが最もお世辞を言わなそうな人種だからこそ、先輩の言葉より美紗の言葉より、その反応がストレートに伝わってきた。

ボクにとってはもしかしたら、今日一番嬉しい賛辞だったかもしれない。


「なかなかヤルじゃんか、お前」

「でしょ、もっと褒めて」

調子に乗ってそう返した。


ううん。
ありがとうとか、嬉しいとか、そう言う柄じゃないから、そう返したんだ。