「上手に焼けたじゃない、なお!」

美紗はやたらテンションを上げてそう言ってきた。

タイミングがまるで話を遮るような不自然な感じだったけど、『先生』に褒められて悪い気のする生徒などいるはずがない。


「でしょう!ちゃんと【惚れ薬】も入れたんだ」

ボクは胸を張ってそう答えた。

怪訝な顔で「惚れ薬?」と呟いた純平を無視して、

「おいしそう。早く食べたいわ」

と美紗が目を細める。


嬉しい。
美紗に認められた。
ボクも、早く美紗に食べてもらいたかった。


でも

「僕が先だからね」

その【権利】を持っている響先輩がやんわりと、クッキーに伸びる美紗の手を妨げた。