気付いてしまった事実に、ボクは少しばかり混乱した。

何度目かの沈黙が訪れる。
不思議と、それまでに感じた居心地の悪さや不安はなかった。


校庭で騒ぐ学生の声を、遠くに聞いた。

それから、静かだった別館の廊下に響く、聞き慣れた2つの足音を。


「……――てね」

「――ったよ……」


近づいて来る、2人の声を。


帰ってきたのだ――、【その時】が来たのだ。


姿勢を戻した先輩が、細く長く、静かに息を吐き出した。