「ボク、まだ死にたくないです」

ボクの答えも、冗談まじり。
先輩は、満足げに、楽しげに声を出して笑った。

本気か冗談か判断のつかないギリギリの口調で、

「そうならないように練習しておくよ」

と言いながら。


不意にまた沈黙が訪れると、彼はチラリとホワイトボードの側を見やった。

ボクもつられてそちらを見る。
ホワイトボードの向こうのドアは下の方しか見えないけれど、もちろんそこに人影はない。


美紗と純平の間で今何が起こっているのか。
そこに意識が向くと、チクリと心臓が痛んだ。


「遅い、ですね」

先輩が気を遣って言わなかったのだろう言葉を、ボクは自分で絞り出した。