しばらく心地よく聞いていたその【音】が、不意に途切れた。
あれ、と思って見れば、

「噂になっちゃって、迷惑したろ?……僕のせいで、本当にごめん」

そう言って、もう一度会長が頭を下げる。


ボクは彼の話をぼーっとしながら言葉としてではなく音として聞き流していたから、最後のその言葉の意味だけしか理解出来なかった。
ええと。
よく分からないけど(聞いてなかったからなんだけど)、別に何もこの人のせいじゃないよな?


早く頭、上げてほしい。
差し出された頂頭部をじっと見てたら、髪の毛があんまり細くて柔らかそうだから、触ってみたくなってしまう。


美紗のピンクベージュに可愛らしくカラーリングされたふわふわパーマとも、純平のオレンジと赤が混じったようなツンツンの茶髪とも全然違う。

柔らかそうなクセのある髪は、色素が薄すぎてこげ茶なんだかグレーなんだかもよく分からないけれど、ボクと同じで人工的な色を加えた気配はなく、地の色をキープしているみたいだった。
……ボクの髪は恐ろしいほど真っ黒だけど。


じぃっと見ているうちに、危うく匂いまで嗅いでしまいそうになる。
あぶねえ。
変態か。