焼き上がったクッキーをオーブンから取り出すと、甘い匂いがリビング中に広がった。

クマは(もちろんクマ以外も)いい具合に焼き色がついて、焼く前よりは多少クマらしくなっていた。
網にあげて粗熱が取れるのを待ち、ようやく試食という段階で。


……。

……これは。


「……ヤクザね」

と、ボクが喉元で我慢した言葉を、母さんは躊躇いなく言ってのけた。


クマの顔には、斜めに大きくヒビが入っていたのだ。


よくよく考えたら、練っちゃダメだと言われていた生地をこねたんだから当然かもしれない。

美紗はなんて言ってたっけ。
確か食感が、とか、焼き上がりが、とか?