洗い物を始めると、母は先日の練習日のようにお湯を沸かし始めた。

一戦終えたボクに、ねぎらいの緑茶を淹れてくれるつもりか……ただ単に、自分のカップが空になったからか。

どっちにしても、こうして並んでキッチンに立つのは楽しい。


『一緒に作ったら、楽しいと思って』

『あんたと並んでキッチンに立つなんて、なんだか夢みたいだわ』


不意に美紗と母の言葉が、交互によみがえる。
そういう感覚がボクにもあるってことが、なんだか無性に嬉しかった。


「ほら、さっさと洗っちゃいな」

ボクのマグカップにお茶を注ぎながら母が言った。
手を止めてボーッとしていたのに気付き、慌ててボクはボールの泡を水で流した。