オーブンに鉄板をセットして、あとは結果を待つのみ。

……あ、いや。
大嫌いな片付けという工程が残ってるわ。
ここくらいは、母さんが手伝ってくれてもいいんだけどな。


そんな心の声は、もちろん届かない。
浮かれた様子で

「母さんの味見分はあるかしら」

なんて鼻歌まじりに言っている母が、ボクの甘えに気付いていてあえて無視しているのか気が利かなくてのん気なだけなのかは……判断つかない。


『あえて無視』という発想から、谷底に子供を突き落すライオンを連想して可笑しくなった。

ライオンに比べたら、大した試練じゃない。
さっさと片付けてしまおう。