ボクは専用のエプロンすら持ってなかった。

もっと言えば、母にもエプロンを着用する習慣はない。
料理や家事をするのに汚れても気軽に洗濯できるラフな格好を、母はいつもしている。

だから、驚いた。


「プレゼントよ」

そう言って母が差し出した、真新しいビニールに入ったままのソレを見た時。

「はじめての手作りの記念に」


シンプルな、グリーンとグレーと白の3色に彩られた不規則な幅のストライプ柄エプロン。
フリルなどの飾り気はもちろんない。

ボクが身に着けてもおかしくないような柄や形を選んでくれた母の気持ちが、素直に嬉しかった。


与えられた戦闘服を着用し腰の後ろでリボンを結ぶのに苦戦していると、母の手が伸びてそれを手伝う。
そして母はボクを戦場に送り出すかのように、ポンと背中を叩いた。