「先輩、童て」

純平が言いかけた一言に、間髪入れずに反応した美紗が後頭部を一撃して黙らせる。


お前は人のこと言えないだろ、と喉元まで出かかった言葉をボクは飲み込んだ。

食べかけの弁当箱という名の遠距離砲が美紗から飛んで来たらたまらない。
ついでに、ボクだって(美紗だって)人のことを言えないのは同じ穴のなんとやらだ。


それにしても美紗みたいな子は、こういう言葉に反応しないで欲しい。
むしろ『何それ?』とか言ってきょとんとしている方が可愛らしいのに……と思うのは、ボクの身勝手か。


純平だけが驚きも動揺もしてなくて、ただ面白がっているその様子はなんだか――。


「純平、もしかして知ってた?」


得意げな顔で口の端を歪めた純平に、ボクも一撃食らわせてやりたいような衝動が一瞬だけ走った。