「君に、言ってるんだ」

生徒会長のその真っ直ぐな視線と言葉からは、逃れようがなかった。


彼の言葉を聞いて立ち上がった美紗が、何も言わずに黙って図書室を去ってしまうのをボクは呆然と見送った。
一緒にいてフォローしてくれないのは、多分、この人とちゃんと話せってことだ。


1人でやってきて、しっかりボクの目を見て告白してきたこの人が、ただのミーハーではなくマジかガチなんだってことくらいはボクにも分かる。


でもさ。


目の前に立ったまんまの、このふわりと優しい雰囲気を纏う長身の男のことを、ボクは何も知らないし。
なんなら名前すら知らないし。
そもそもたった今まで、なんの接点もなかったのだ。


……多分、向こうだって、知らないはずで。