大分片付いてきたキッチンに母が滑り込んできて、ボクの隣に立ち湯を沸かす。
焼きすぎたクッキーを消費するために、お茶でも入れるつもりなのだろう。

ガチャンガチャンと音を立てながら洗い物をするボクと並んだ母さんが、不意にクスリと笑う。

「あんたと並んでキッチンに立つなんて、なんだか夢みたいだわ」


ボクが呆けている間に洗っていた鉄板の角に水道水が直撃して、跳ねた水でそこら中がびしょびしょになっても、母は楽しそうに笑っていた。


……ボクは何か思い違いをしていたのかも知れない。

何も言わなくたって、両親にとってはボクは――、やっぱり、女の子なのだ。