残念ながら、ボクの意地はただの意地のまま終わったようだ。
だけど弱気な本音を思うと、まあ、『昨日と大して変わらない』程度のモノが1人でも作れたという結果は喜ばしいことかもしれない。

母さんだって大したグルメじゃないことを思えば、その意見を鵜呑みにして良いものかは疑う余地もあるのだけど。


散らかったキッチンを(潰れた卵が大量に入ったボールを除いて)片付け始める。
この作業だけは、まったく楽しくないな。


「ねえ、なお」

いつになくニヤけた顔をした母が、ボクを手伝うことなくカウンターの向こう側から聞いてくる。

「それ、バレンタイン用でしょ。……誰にあげるのよー?」


ウリウリ、と、肘でつつく真似をしてくる(カウンター越しだから当然届かない)その姿は、我が親ながら、気持ち悪い。
……めんどくさ!
なんだ、このミーハーぶりは!