「あんた……本当に昨日のクッキー、自分で作ったの?」

呆れたような母さんの目は、ボールの中に釘付けだった。
無理もない。
ボクの目も釘付けで、放心状態だ。


「……昨日は美紗が割ってくれたんだ」


練り混ぜた作りかけの生地の上に落ちた、潰れた黄味と砕けた殻。
一気に士気が落ちた。

卵も割れないのか、ボクは!!


殻をひとつずつ拾い上げるのに苦戦するのを、母が鼻で笑う。
……馬鹿にしやがって、今に見てろよ。


だけど、どんなに丁寧に除去したつもりでも、結局ソイツらが完全にいなくなることはなかったようで。
焼き上がったクッキーをひと噛みした瞬間、じゃりっと不快な感触が口の中に広がった。


ボクは母の指導の元何度も何度も卵を割る練習を重ね――、夕飯の食卓に、大量のじゃりじゃりスクランブルエッグが並ぶことが確定した。