美紗のレシピを机の上に伏せ、急いで防寒装備を取る。
ボクがひょいひょいとキャップとマフラーを机の上に積み重ねるのを見て、純平は呆れたように笑った。

「お前のクローゼットは宝の持ち腐れか」


いや、むしろ腐ってるのは机の方じゃないか?
本来の存在意義を失って物置と化してるわけだから。

純平の部屋は弟と共用の和室で、だからきっと、自分専用のクローゼットを持っているボクが羨ましいんだろ。


最後に脱いだコートを椅子の背に掛ける時に、そこに置かれた純平の大きなスポーツバッグが目に入った。

「部活帰り?」

「おう。お前は?」

「美紗ん家行ってた」


へえ、と、大して興味なさそうに言って、純平はまた漫画を読み始める。
手土産の漫画の新刊は、仰向けに寝そべった純平のお腹の上でボクを待ち構えていた。