家に帰ると、母は夕飯の支度に勤しんでいていた。


どうしようかな、コレ。

ぶら下げた紙袋を見下ろして少しだけ悩む。
1人では食べきれなそうな量を持たされてきた(正確に言うと今日焼いた分ほぼ全部だ)。

どうせボクだけじゃ食べきれないから、後で母さんと一緒に食べようかな。


レシピだけを袋から抜き取り、

「これお土産。食後のおやつに食べよ」

と母に声をかけながらダイニングテーブルに紙袋を置く。


「あらやだ、いただき物?」

母は少しだけ焦ったように顔を上げた。

美紗ん家から、高級洋菓子でも貰って来たと勘違いしたに違いない。
意外とこの人は、いただき物のお返しとかにはマメなのだ。


「違くて、美紗と一緒に作ったの」