「美紗、焼けた!」

早速つまみ食いをしようとしたら、美紗が鍋つかみを持って慌てて止めに来た。

「素手はダメよなお! 火傷するから」


そうか。
クッキーが熱いなんて思ってもいなかったけど、焼き立てなんだから当然だ。
なんだかすごく新鮮な気分だ。


美紗がオーブンから取り出した鉄板から、そのままアツアツのクッキーをつまもうとしたら、冷めるまで『待て』の命令が下された。
焼き立ては熱いだけじゃなく、柔らかいとか、なんとか。


20分以上待たされてようやく試食を許されたボクは、正直、その味に感動を覚えた。
初白星の喜びを噛みしめるボクを、美紗は保護者然とした眼差しでじっと見ていた。