「なお、楽しくなってきたんでしょ?」

冷蔵庫からついに【主役】を取り出しながら、美紗が問いかけてくる。


……ボクはそんなに分かりやすいのかな?
図星を言い当てられてあさっての方向に視線を逸らすボクを、彼女はクスクスと笑った。


美紗がボクのために作ってくれたレシピは、確かに分かりやすくて簡単だった。
だけど市販の手作りキットとかを使えば、きっともっと楽が出来るに違いない。
それでも彼女が自作のレシピを用意してくれた理由を、ボクは漠然と解釈した。


『一緒に作ったら、楽しいと思って』

うん、思っていたより、ずっと楽しいよ美紗――。