薄力粉をふるった次は、『切るように混ぜる』、という工程にさしかかっていた。
『切るように』がどんなか分からないボクの手から、美紗がそっとゴムべらを抜き取る。

どうやらここは、重要な工程らしい。


「今までみたいに練りまわしては駄目よ」

と言いながら、美紗は慣れた手つきで生地を混ぜた。

「練るとどうなるの?」

「うーん……膨らみと食感が悪くなる、かな」


なんだ、味には関係ないのか。
でも完璧主義の美紗に、そんなことは言えない。


気が付いたら【惚れ薬】もちゃんと入れるつもりになっている自分に、何をやる気出してんだ、とツッコみたくなるけれど。
クッキー生地を混ぜる作業は、ボクが思っていたよりもずっと楽しかったんだ。