……ずっと、不安だったんだ。
一年に一度のその行事が、嫌でも定期的に思い出させる事実が。


美紗のチョコレートしか受け取らない純平。
純平だけにチョコレートを渡す美紗。

――ボクの、不確かな立ち位置。


完璧に女の子らしい美紗、男らしい純平。
ボクら3人のバランスは、ボクがその『中間』にいるから保てているような――。

けどその中途半端な役割が、常に、いつも、本当は不安だった。


「14日は生徒会室で、みんなでチョコレートパーティしましょうね」

飛び散った粉を拭き終えた美紗がボクを見上げ、目を細めて笑う。


シャーペンの芯がいつの間にかなくなっていた指先を見つめて、ボクは少しだけ、可笑しくなった。


「じゃあ、まず食べられるモノを作るか」

ボクは作業再開を宣言した。