――ソレは、ずっとボクの中にあったモノだった。


シャーペンを上下逆さまに持ってることに気付かず思い切りノックしてしまった後、指先に刺さって折れた芯が、皮膚の中に残ってしまったみたいに……ずっと。


普段は痛くも痒くもないのに、ふとした瞬間に思い出すと気になって仕方がない。

そうなるとどうしても取り出したくて、ボクは指先を削るんだ。
例えばカッターナイフの刃先とか、コンパスの針なんかで。

痛みを伴うその作業は結局一度も結果を出したことがなくて。
左手の人差し指の先端は、今でも少しだけ、皮膚が厚くて硬い。


ふと久しぶりにその指先を注視して、気付いた。
いつの間にか、皮膚の下にずっとあったはずの黒い粒が消えていることに。