思考はぐるぐると渦巻いて気は重くなる一方なのに、美紗の適確な指示に自然と手は動いた。

順番にボールに放り込んだ材料を練り合わせていく作業は

「意外と……」

「ね、簡単でしょ」

うん、簡単だ。


ほんの一滴だけ垂らした謎の液体と、たったひとつまみだけ混ぜた白い粉の正体は分からないけどね。


「こんなちょびっとで、なんか意味あんのかよ」

「魔法よ、魔法」

「ヤバい薬じゃないだろうな」

「……惚れ薬かもね?」


ボクの作業を横から指示しながら見ている美紗はすごく楽しそうで、滅多に言わないような彼女らしくない冗談を口にした。