耳まで出るベリーショートは生まれ持った薄い唇や高すぎる鼻と相まって、さらに172センチと伸びすぎた長身に、メンズ服。
パッと見は完全に男、どころか、しゃべり方も性格も趣味も、まるで男だ。


ボクは名前の通り男らしくて、名前に反して素直じゃない。
高2にして未だ自分をボクと呼ぶのを、今となってはたしなめてくれるのも美紗だけだ。


このままじゃ良くない、気はしている、薄々。
――でも、今更だし。


「もう少し女らしくしなさいよ。そしたら寒い中逃げ回らなくてすむんだから」

そうは言っても、美紗。

「ボクだけバレンタインの襲撃から解放されても」


……ああ、そしたら2人だけで逃げるのかな。
それはそれで、この2人ならお似合いかも。
愛の逃避行ってやつか。