白い粉、卵、バター。
キッチンカウンターに既に並べてあるそれらが、ボクの今日の対戦相手だと主張しながら待ち構えている。

でも……


「チョコじゃないの?」

昨日の悪魔の姿は、どこにもなかった。


「今日はね、コレを使おうと思って」

と、美紗は冷蔵庫から『主役』を取り出して見せてくる。
昨日の巨大なブロックチョコとは打って変わって、大量の小粒のチョコだった。


「刻まなくていいし、溶かさなくていいから」

「……ふぅん」

ボクには出来ないからね。
包丁も上手く使えないし、テンパ……なんとかも下手だし。


「チョコチップクッキー」

と、美紗が得意げに笑った。