「もう、起きたらすぐ来てって言ったのに」


ドアを開けるなり、美紗は頬を膨らませた。
いや、ボクは言われたとおりにしたんだけど。


「寝坊した」

「休日は有意義に過ごすものよ」

うん、そうだね。


休みの日にチョコ菓子作りなんて酔狂な真似、本当に有意義だと思うよ。
昼過ぎまで寝て、起きてからもごろごろしながら少年漫画を読みふけるなんて、どうかしてるよね。

なんてもちろん口にせず、黙って美紗に続いて家にあがる。


「ほら」

と美紗が手を伸ばし、ボクの防寒装備をひとつずつ、自然に剥がしていった。
棒立ちのままされるがままに脱がされていたら、無言の目力が飛んで来る。