「大丈夫。まだ時間はあるし、失敗の原因は分かってるわ」

美紗がそうは言うものの、ボクの心はすでに折れている。

「もう、ベタベタドロドロのチョコレートなんか見たくねぇ」


チョコレートは固形物であるべきだ。

溶けたチョコはやたら甘ったるい匂いがキツくて、嗅覚を遮断しておかなければ呼吸するだけで胸焼けする。

さらに言えばボクが溶かした方は見た目もブツブツべちょべちょ(美紗のはとろとろ滑らかだった)で、泥んこ遊びか吐しゃ物か排泄物かを思わせとても食べ物には見えず、ただただ吐き気をもよおすだけだった。


このままじゃ、チョコ自体嫌いになりそうだ。


ボクのうんざりした表情を汲み取ってくれたのか、美紗は今日の作業の終わりを宣言してくれた。
「続きは明日ね」という残酷な言葉とともに。