踏み入れることを躊躇っていた入口を、美紗は強引な命令という建前でこじ開けてくれたのかもしれない。

そう考えることも出来た。
勘が鋭くて頭の良い美紗だからこその、やり方だと。


でも……美紗の行動も真意も二重三重に謎に包まれていて、考えることを放棄してしまったボクが、真実に辿りつくことは到底あり得ないけれど。


何かを失うかもしれないという恐怖、何かが分かるかもしれないという期待、何かが変わるかもしれないという不安。

その先にあるかもしれない【変化】に対する、純粋な興味。


そうだ、頑なに抵抗することだって出来た。
美紗に逆らえないフリをして、多分、本当は。
純粋にボク自身が、そうしてみたかっただけなんだ。