連れ出されたのは、この辺りじゃ一番品ぞろえの良いデパートだ。
行先がここと気付いた時から、もうすでに嫌な予感がぷんぷんしている。

つーか、もう目的地分かっちゃいるんだけど、それが間違いだと祈りたい。


「見て見て、なお!」

ボクの手を引っ張ってはしゃぐ美紗の指さす先は案の定で、ボクは心底さっきの行き過ぎた悪戯を悔いた。
あんなの、ほんの冗談なのに!


赤やピンクに飾られたその売り場を一瞬見ただけで、目がチカチカする。
熱気と甘ったるいニオイが充満して、それだけで胸焼けしそうだ。


【バレンタイン特設コーナー】


……最悪。