……何か――、聞こえる。





「なお、起きて」

「オイ、起きろ」



――……

……?



「おはよう、なお。眠れた?」


至近距離で響いた、まだ聞きなれない、低くて穏やかな声。
飛び跳ねるように身体を起こしたら、先輩の顔が目の前にあって。

一気に覚醒した。


「……やっべ、爆睡してた!」


近付きすぎた距離に一瞬先輩の目が泳いだのを、見なかったフリをする。


うわー、寝顔見られた。
あぶねー、鼻ぶつかるとこだった。

っていうこっちの動揺も、この際気付かないフリだ。