「美紗? どーいう……」

「先輩に名前で呼ばれるのは気色悪い」

ボクの質問を遮って、美紗がとんでもないことを言い出した。


「は? 何言ってんの美紗」

失礼にもほどがあるだろ!

「私じゃないわ。なおが今、そう言ったのよ」

「は……?」


――『なおちゃん』とか、気色悪いんで、止めてくれます?――
自分の言葉を頭の中で再生して、首を傾げる。


「バカ、全然違うよ」

「そりゃ俺らは分かってるけど、そうも聞こえんだよお前の言い方は」


純平にまでそう言われると……。


「ちゃんと正確に伝わるように、言いなおしなさい、なお」


しっかり者のお姉ちゃんみたいな、美紗。
ボクを躾けるみたいにそう言ったときにはいつもの美紗に戻っていた。

さっき一瞬哀しい目をしたように見えたのは、多分、ボクの見間違いだ。