『さぁ、そろそろ帰ろうかな』

キラが腰を上げようとした。

まぁ、もう充分遊んだしね。



「そっか、アタシはまだ飲んでくから」


『え?りーちゃん、帰らないの?』


「え?あ、うん。」


だって元々、ここに飲みに来るつもりだったから。

本当は卓さんに厄日だって愚痴を溢したかったのだから。

もうホストとしては充分、付き合ったよ。

お疲れ様。



……だけどなんか淋しい気持ちになったのは何故だろう。



『そっかぁ、じゃぁ、まだいるわ』

何故かキラがまた腰を下ろした。



んん??


なに?

何がしたいの?キラは?

空気を読んで一緒に店を出て欲しかったの?でもアタシ達そんな気を使うくらいの仲ではないし…それに昨日今日会ったばかりの、ホストにそこまで優しくは出来ないし…
まだ卓さんに愚痴ってないし…


帰ると言っといてまた腰を下ろしたキラの行動にアタシは?がいっぱいの頭。

最期まで付き合うのが筋だとでも思ってる?
そんな気を使わなくたっていいのに…

きっと不思議な顔でアタシはキラを見ていた。

だけど、キラはただ隣でまた何気ない話を一緒にしてきたので気にしないように努めた。


店を出たのは深夜1時過ぎだった。

『りーちゃん、今日はありがとう』


ん?何が?


結局、割り勘だったし…
お礼言われることしてないんだけどな。

普通、ホストと客だとしたらアタシが奢る立場だと思うんだけど…。

『なんか今日楽しかったからさ』


キラはそう言って手を振って帰ってく。

それもお世辞だよね?



キラが向かう方向には、住んでいる寮があるという。
本当かどうか知らないけど、キラが帰ってく。


アタシも軽く手を振って、自分のマンションへ足を向けた。