エレベーターの前まで送ってくれる。


ちゃんと他のホストのお客と同じエレベーターにはならないように、2台のエレベーターは受付兼ウェイターの人に配慮されている。


『じゃぁ、りーちゃん、今日はありがとね。』


「うん。」


エレベーターが閉まる。


が、また扉が開き出す!



え?

な、なに?

『りーちゃん!やっぱ、下まで送ってく!』


は?

下まで送ってくのはちゃんと指名いれた人にしなよ…と少しだけホスト事情を知ってるアタシはそう思いつつも、黙っていたらキラが隣に立つ。

5階のclub MILKYから1階までは、間でどこも止まらなければ、わずか20秒くらいで着く。


その間、二人とも無言でアタシにはキラが何考えてるかわからなくて、その時間ですら長く感じた。

「じゃあね」

アタシがビルから立ち去ろうとすると、まだキラはアタシの後を付いてくる。

タバコでも買いに行くのかも知れないから、黙って先を歩く。

一条分歩いても、二条分歩いても…まだついてくる。

…………。

痺れを切らしたアタシは立ち止まり、振り向いてキラに訊ねた。

「キラ、なんかこっちに用事あるの?」

『え?ないよ』

「じゃ、なんで付いてくるの?」

『だって、俺、送るって言ったじゃん(笑)』

聞いてなかったの?
なんて付け足されて言われたが、そもそもこんなところまで送るって…。

普通、店のビル下までだよね…。



てか、アタシ初回だしさ…。

この人、本当に、マイペースだ。


こんな人…初めて見たよ