彼の席は、あたしの隣やった。


黙って彼が近づいてくる。

目はじっと下を向いていた。



ああ、やっぱあたしって

運悪いな、なんて

考えてた。



席に着いた彼は、

やっぱり気だるそうで。


そして、

やっぱり関わりたくないなって、

思った。






休み時間になった。

あたしは席を立とうとした。


「 なぁ、オマエ、名前は? 」

いきなり横から声がした。

驚いた。

関わりたくない彼だった。

サエキ ナオ
「 佐伯…奈緒…です。」


あたしは、彼の

様子を伺いながら言った。


「 ふぅん、そっか。」

彼はそう呟いた。

何のために聞いてきたのか、

何が目的なのか、


たった名前を

聞かれただけなのに、


あまりにも、

彼の表情が、

質問と合わなくって、

彼の顔をじっと見た。


不思議に思ったのか、

彼はこっちを見て

キョトンとした。


その仕草が、

なんだかおかしくって、

くすぐったくって、

よく分からない

気持ちが心に迫ってきた。


しばらく

そこから立ち去れずにいた

あたしに、彼は

「 よろしく、佐伯。」

そう言った。


不器用で、

吐き捨てるように

言った彼は、



あたしに、

見かけで判断するのは

良くないなって、

感じさせた。



「 うん、よろしくね。東くん。」