夏が始まろうとしていた。



蝉の鳴き声が

耳にこべりついて離れない。



そーいや、

アンタと出逢ったのも

蝉の煩い夏やったね。



きっと、

あたしたちの運命の歯車は

そのときから、

回り始めてたんやと思う。






頭のてっぺんが禿げた

50過ぎの先生が

教室へ入ってきた。



「 おい、今日は転校生を紹介する。」



なんや、こんな時期に転校?

2学期からにしたらえーのに。

教室がざわざわしていた。



彼が教室へ入ってきた。

あたしは一瞬、

呼吸をすることさえも忘れた。



見るからに、

"不良"

と言える人種の彼は、

気だるそうに教室を見回した。



一瞬で教室が静まり返った。

誰も、何を言うこともなく、

ただただ呆然と、

彼を見つめていた。