朝の教室は騒がしくて、

一瞬であたしたちの

会話は溶けて

なくなってしまった。



のんちゃんが、

あたしに駆け寄ってきて、

「 ちょっとこっち来て。」

って言うから、

東くんをチラッと見ると、

もうあたしなんて

見ていなくて、

黙って自分の席へ行って、

用意をしてる。



そんな事に

寂しさを感じて、

あたしってこんなにも

欲深い人だったんだ、

と、思った。






のんちゃんに

ついていくと、

誰もいない

図書室へたどり着いた。



あたしの斜め前を

歩いていたのんちゃんは、

図書室に着くなり、


くるっとあたしの

方を向いて、


「 ねぇ、本気で東くんと絡んでるの? 」

と、聞いてきた。

「 う、うん。」

あまりの迫力に

押されながらも、

あたしがそう

答えると、

「 え!やめときなよ! 」

って、即答で

返っきた。



なんでやろうか。

あたしは無性にも

腹が立って、


「 東くんは、いい人だよ。」

って、のんちゃんの瞳を

見ることなく、

床の、古びた

木目を見ながら

言った。



その言葉に

のんちゃんは

ショックを受けたみたいで、


顔を上げると、

目を大きく開けて、

唖然として

あたしを見ていた。




あたしは、すぐに

失敗した。

と、思った。




もとから人付き合いが

苦手で、

よく喋る友達が

のんちゃんくらいなのに、


そののんちゃんに、

きっと、呆れられた。










でもね、今のあたしは

あの時、のんちゃんに

呆れられてでも、

あの言葉を言った事は

後悔してないよ。




だって、それが

正しいから。



彼は、いい人だから。





どうしてやろうね。

あたしには、

そうにしか見えないくらい、


アンタの存在が

大きくなってたよ。