結菜はそういう、色恋に敏感だ。だから私の観察をそういうのだと察知したらしいが、と言えば皆藤は嫌そうに「一緒にすんなよ」と。

 グラウンドからは声が聞こえる。名前や、練習の何か。それからバットがをうける音。
 人が小さく、見ているとなんとも言えない気分になる。


 皆藤は何も言わない。
 何しに来たのだろう。たまたま通りかかった、とか?


 ここの小さな学校の部活というのは、数少ない。皆藤は野球部でもないし、そしてサッカー部でもなければ、バスケ部もない。じゃあなに部かというと、彼は部活をしていない。帰宅部というのか。

 でも、なにもしていないわけではない。
 彼は町の剣道少年団に入っているのだ。この学校には剣道部はない。あるのは廃部一歩前の柔道部だけだ。



「好きなのか」



 沈黙を先に破ったのは、皆藤だった。私はグラウンドと、空の色がキレイだな、と思っていた頃だった。


「うん」
「あんなやつの何処がいいんだよ」
「は?」
「あ?」


 あれ、と思った。間抜けな声に、皆藤もまたこちらを見た。何で。何で怒ってるんだろ。意味わからん。


「何の…あ、もしかして皆藤も、私が坂本のこと好きだと思ってんの」
「普通そう思うだろうが」
「違うからね。ただの、興味の対象ってだけ。坂本なんかよりここから見える景色の方が好きだし」