女子に生まれたからには、男子よりも空気を読めるとか、小さなことにも目を配らなくてはならないとか、必要な力が多いのだ。だから、私は坂本だけ気になっているわけではない。名前を出すなら寺田とか川合とかだって私は「なにやってんだよ」……あ?


「皆藤?」
「おう」
「どうした」
「俺に聞き返すのかよ」
「……うん?」
「だから、んなところでなにやってるんだよ」


 ああ、そういうことか。
 私は聞かれたことに「グラウンド見てたの」と返す。皆藤が「グラウンドって」と教室内をのしのしと歩いてくる。皆藤は大きい。それに坂本より男性的だと思う。
 坂本は、なんというか、イマドキ、な感じだ。


「何もねーじゃんか」
「サッカー部練習してるじゃん。奥には野球部いるし」


 皆藤が私の机の前から、窓を見ていた。坂本か、という言葉に私は驚く。


「お前いっつも見てるだろうが」
「わお、なにゆえ」
「お前って…変だよな」
「変でいいよ変で。というかよくわかったね。私が坂本見てるって。結菜しか今まで気がつかなかったのに」